以下は、2016年4月に韓国ソウルのオルタナティブ活動で運営されるシェアハウスに暮らす若者へのインタビュー記録である(活動家が有志から募った資金で社会変革活動をしている。シェアハウスは融資金で一軒家を借りる資金にしている)。この方は、大学を休学し生き方を手探りしていて、やりたいことを少しずつしていっている様子であった。
Mさん、(女性:24歳、大学休学中)
京畿道一山市で育つ。大学はテジョン(専攻は、演劇・映画、心理学・哲学)。大学には2年通ったが2015年5月に休学してソウルのシェアハウスに来た。2016年末まで滞在予定。
シェアハウスの人たちが書いた独立雑誌を見て知った。シェアハウスに1日生活して気に入った。シェアハウスで毎週おこなわれる会議の様子がHPに載せてあることがよかった。住人がどのように暮らしているのかがわかり、住人同士コミュニケーションがとれている印象をもった。
地方よりもソウルが、文化的に先に進んでいるので、ソウルに来たかった。独立映画などもソウルでは上映され、政策的なことも新しいものがソウルから始まる。地方は開発中心だが、ソウルは開発よりも文化の方向に舵を切っていると感じる。
大学に通っている時は、授業や課題に追われて忙しい。外から課題を与えられて、何とかこなしている感じ。
ここに来てから、学ぶことは自分の意思でしていかなければいけない。
今は、自分のしていることが直接、自分の結果になる(大学時代はそうではなかった)。大学時代は、文化活動をする余裕がなかった。
【今やっていること】
・マウル(町内)ラジオ(5日/週、11〜18時)→16年4月〜給料130万₩(13万円)
・帽子作りの勉強(週末の1日)。
・マンガや絵を描く。
ここでは、自分の才能を活かすことができる。
家の幕に絵を描いたり、友達のつくる文集に絵を描く。
性暴力反対の活動をしている知り合いが、活動で使うTシャツに絵を描いたり。
幼い頃から絵を描くのが好きだった。
大学では専門を美術にしようとした。
フランスに留学に行った友達が、留学試験のための絵の評価についてMさんに尋ねて、Mさんが評価したとおりに書いたら留学できるようになった。「自分の考えじゃなくて、教授に評価されるように、それらしいことを書けばOK」ということがわかった。結局、教授に気に入るようなコトをやらないと評価されないのかと入試をやめた。
【マウル(町内)ラジオ】
営利目的ではない。ソウルのメディアセンターが支援していて、事業が経済的自立できるまで支援。しかし、収益をあげるには広告費に頼らなければいけない。マウル放送(龍山区)は規模が小さく、広告を出してくれる会社もない。
マウル放送を通して、市民多くの人が自分の声を出して届けられるようになるのがいい。共同体事業の活性化に寄与したい。
セウォル号事件の後、KBSなど既存メディアの放送について市民から不信が生まれた。小さいメディアが生まれている段階。
李政権以降、小さいメディアへの支援が減り、マウル放送も減っている。
KBSは税金で支援を受けているのに、公共メディアとしてマウル放送などにも税金で支援すべきだ。
現在は、政府によってマウル放送が規制を受けないか神経を使っている。
【生活】
ここに来てからアルバイトをたくさんした。
食堂、化粧品店(LUSH、親環境化粧品)。どれも5500〜6000₩(≒600円)/時給
時間を仕事に投資すると自由の時間がなくなる。お金と時間は反比例の関係にある。
昼食は、食堂のまかないは8時間以上働かないともらえないので、コンビニで弁当を買って食べていた(3000₩、食堂で食べると6000₩もかかるので高い)。
生活が苦しかったので服は買わなくなった。人からもらったり、フリーマーケットで安く買ったり。大学時代は服をたくさん持っていたが、シェアハウスに移る際に必要最小限のもの以外は捨ててしまった。移動しやすく、いつでも別の場所に移れるように荷物を身軽にした。
ソウルに来る時はたくさん稼ごうと思っていた。しかし、シェアハウスで家賃と食事込みで22万₩(≒2万2,000円)の消費なので、適度に稼ぐ暮らしが良いんじゃないかと考えるようになった。
ひとり暮らしの時は、食べ物を買っても腐らせていたが、シェアハウスでは人が多いので一度つくった料理も残らず、食べきてしまう。
ソウルでシェアハウスでない家を借りたら家賃が34万₩(≒3万4,000円)。
月に70〜80万₩(≒7〜8万円)は生活費がいる。シェアハウス以外で暮らすのはしんどい。