生きるための自由研究

脱・引きこもりできそうにない半引きこもりです。

社会のすみっこを居場所にする

 

 わたしが「引きこもりアイドル」を名乗って6ヶ月がたった。路上で、看板を立てて知らない人と話したり、投げ銭をもらったりしている。わたしとしては、自宅以外に引きこもれる場所を外につくっている感覚だ。路上に一時的なテリトリーをつくって、そこに引きこもり、たまに通りがかった人が絡んでくれて、孤独を紛らわすというやり方である。蜘蛛の巣をはって、誰かが来るのを待っている感じだ。

 

 最近は、山でとった野草を路上で人にあげたり、いらないモノや食べ物をあげて、お気持ちとして投げ銭をもらうこともある。ただ話し相手になったり、何もしなくてもお金や食べ物をもらうこともある(まぁ、物乞いです・・)。誰かから一時的にでも必要とされた経験、お金や食べ物をもらった経験は、また路上に出ていこうという動機になり、徐々に外でも居場所を増やしていく。街の片隅で出会った人や、たまに会う知人と、その場で一時的な社会(=居場所)をつくる。これを、しょぼい社会参加と呼びたい。「すみっこ暮らし」の実践だ。「すみっこの豊かさ」が伝わればと思う。

 

 

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【会った人】

 

 

 

◉ 海外放浪後に生活保護で暮らすおっちゃんとの交流

 

 今年2月の路上一揆で出会ったおっちゃんが、わたしの路上の居場所をよく通りがかって話をする。生活保護関連の話が多い。おっちゃんもあまり働かず海外放浪を繰り返し、貯金がないから老後は生活保護で暮らしている。わたしのような働けない(半)引きこもりの問題や、社会に適合できない人の事情をよく理解している。国民年金を払っても老後生活できるレベルの額をもらえないということから、「年金は払わずに自己投資に当てたらいい」とよくアドバイスを受ける。笑

 

◉ ギャルに絡まれる

 

 前に若いギャルの女の子に、女装姿がおもしろいから絡まれた。よく、わたしのいるところを通りがかって立ち話をする。わたしが何をしても「かわいいやん〜」と言われて、写真を撮られインスタに載せられる。街で男に追いかけられてウザかったという他愛もない話をして帰っていくこともある。マブダチ認定されている。笑

 

◉ 東大で火炎瓶500本投げたおっちゃんと話した

 

 扇町公園生存権のことをアピールしていたら、60年安保闘争学生運動をしていたおっちゃんに話しかけられた。東大の安田講堂で機動隊に火炎瓶を500本投げたそうだ。でも、機動隊にボコボコにされて3ヶ月入院してしまったそうだ。不動産関連の仕事をしていて、生活保護申請を手伝うこともあるという。「火炎瓶投げるの楽しくなかったですか?」と聞いたら、「楽しかった!」と嬉しそうにおっちゃんは答えた。むかしは、岸信介日米安保という大きな敵がいて、正当な理由をもってみんなが火炎瓶を投げて力を見せつけることができた。今は、火炎瓶を投げるなど外に力を向ける事がしにくいから、生きづらさを解消しようにも力の向け場がないのだと思う。何らかのやり方で自分の欲望や力を表現できて、「心の中の火炎瓶」を投げられることが生きづらさの緩和になるのではと思うんだけどね。火炎瓶の話からドゥルーズ的な欲望論が思い浮かんだ。

 

◉ 京大生に経済学の話をして投げ銭をもらった

 

 夜の三条大橋で「引きこもりアイドル」の看板を出してグダグダしてたら、京大生の人たちに話しかけられ、少しおしゃべりした。経済学部の学生だというので、投げ銭のことをゲーム理論の視点から話してみたら納得してもらえた。簡単に言うと、自分が困った時に知らない人から助けてもらえるなという「信頼」があれば、人は物乞いなどに気軽に投げ銭をするようになるという話だ。自分が誰かを助けても損しないという期待がないと、人は誰かを助けたがらない。という話をしたら、京大生から投げ銭をもらえた。笑

 

 

◉ 自転車で日本一周旅行するお姉さんと話した

 

 夜の路上でひとり寂しく立っていて、思い切って少し離れたところにいるお姉さんに「こにゃちは〜」と手招きしてみた。お姉さんは何だろうと応じてくれて、「引きこもりが路上に出て一発カマしてやろうと思ってます」と言ったら、「うちの兄も引きこもりなんですよ」と言われた。お姉さんはこれから自転車で日本を回るそうだ。テントを積んで野宿でいくそう。野宿旅行や歩き旅の話をして盛り上がった。野宿や旅の話ができる人がいて嬉しかった。投げ銭箱を見て、お小遣いももらった。もう、日本一周から帰ってきてるだろうか?

 

◉ わたしの路上活動は自助グループみたいだと言われた

 

 依存症からの回復や生きづらさの問題に関心のある方に声掛けしてもらった。わたしが、「最近はコロナで自助グループもやってないところが多いですね」と言うと、「ここって自助グループみたいやん?」と返事された。路上に突如現れる居場所のようなもの。それを聞いて、路上で気軽に生きづらさや諸々のことを話せる場をつくることが、自分の回復にもなっているのだと気づいた。

 

◉ 若いアーティストの人たちと路上飲みをした

 

 わたしの路上活動は、花やぬいぐるみでカラフルな場であるからか、アート系の人の目について、立ち寄ってもらいやすい。前に通りがかった方が、路上活動に関心をもって、ここで仲間を集めてダベりたいと言われた。芸術関連の若い人たちが集まって、酒を飲みながらワイワイした。絵やイラストが得意で西成でおっちゃんの似顔絵をたくさん描いていた人とも話ができた。悩める大学院生の方ともお話をした(わたしも大学院ドロップアウトとして話ができた)。

 

◉ おっちゃんがウィッグを買ってくれた

 

 路上にいらないウィッグを並べてたら、たまに気になって立ち寄る人がいる。一人のおっちゃんがウィッグが気になって立ち寄った。女装バーによく行っていて、「わしも女装してみたいんや〜」と金髪のウィッグをかぶって気に入ったようだった。いらないウィッグだからタダであげてもいいのだけど、おっちゃんが「これ、いくらなん?」と聞いたので、「お気持ちでお願いします」と言ってみたら、500円ほど投げ銭をくれた。おっちゃんは昼から飲み屋をハシゴしてて、酔っ払ってできあがっていた。おっちゃんに「おっちゃんの行ってる飲み屋は、引きこもりでも歓迎されますか?」と聞いてみたら、「大丈夫や。俺の名前を出せばいい」と自信満々に言ってたんだけど、大丈夫かな?笑

 

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◉ 路上でニャンニャンしてみたら・・・

 

 路上で通りがかった人にニャンニャン言ってみるとどうなるか?やってみると、面白がってくれる人もいる。通りがかった女性にニャンニャンと言ってみたら、振り返って話しかけてくれた。「あなたは、素晴しい。そうやって人を引き止める才能がある」と言われた。カウンセラーをやっている人で、引きこもりの人の話も聞くらしい。わたしがニャンニャンしてる姿を見て、こんなやり方もあるのかとすごく感動したようだ。「そのうち、いい人に出会えるから、出会いをチャンスに変えたらいいよ」と言っていた。でも、引きこもりの生き方がどうなるかは運ゲーである。だから、わけわからんことをやって、予期しないことを手繰り寄せるのもひとつの手かなとも思う。

 

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◉ 海外の方から1000円もらった

 

 8月のはじめに、四条河原町で路上アイドルとして通行人にあいさつしてたら、一人の男性がニッコリ笑って立ち去った。しばらくしたら、戻ってきて話しかけられた。海外の方で、これから寿司を食べに行くそうだ。わたしの投げ銭箱を見て「この箱なに?Donation(寄付)?」と聞かれた。わたしが、「そうです」と答えると、「なんでお金集めてるの?」と聞かれた。わたしは、「I'm poor.(貧乏だから)」と正直に答えた。すると、その人は財布から1000円取り出して手渡した。「これで、寿司食べなよ」と。大変ありがたい。正直に自分にはお金がないんだと言えば、お情けでお金をもらえることもある。金がないのは恥ずかしいことじゃないんだから、堂々と言えばいいんじゃないか。

 

 

◉ 路上のことは路上の人に聞け

 

 路上でどこで仕入れたのかわからないモノを売っているおばちゃんがいた。話してみたら、路上でモノを売っても警察に注意されない場所を教えてもらった。路上のことは路上にいる人に聞けである。むかしは、東京の路上でモノを売っていたけど、石原都政になってから路上で商売ができなくなったという。路上でワイワイするのが楽しかったと言っていた。夜中も路上にいて、みんなで夜通し酒を飲んでるそうだ。商売そのものよりも、路上で仲間とワイワイすることに楽しみを感じているようだ。

 

◉ 通行人からご飯をもらった

 

 ある日の夕方に王将の袋をもったお姉さんが通りがかって、「餃子おいしそうですね。僕も食べたいな〜」と言ってみたら、お姉さんが振り返って餃子をくれた。その後、チャーハンも持ってきてくれた。「いつも食べてるのでどうぞ」と。ありがたい。お腹が空いたら道の人に声をかけるとご飯がもらえるかもしれないぞ。

 

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◉ 留学生とパーティをした

 

 夏に、路上一揆で声をかけてくれて度々でくわす中国からの留学生と河原でチヂミを食べた。通りがかった人とも話した。この留学生からはご飯をよくもらった。わたしの装いや路上パフォーマンスを面白がってくれる。日本人とはご飯を食べて仲良くなったように見えても、その後に会うキッカケがないと連絡が途絶えてしまうという。日本では人と人とが理由なく気軽に会いにくい。日本人のATフィールドの話になった。

 

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◉ マッチングアプリの男性に振られたお姉さんの話を聞いてあげた

 

  ある日の夜に路上にいたら、突然お姉さんに話しかけられた。緊急事態宣言だから注意されるんちゃうかなと思ったのだが、飲み物を渡されて「ちょっと、わたしの話聞いてや」と言われた。マッチングアプリで出会った男性に振られて、話ができる相手を求めていたらしい。こういういかがわしい系の話は、身内には話しにくいから、わたしのような部外者だと話しやすかったのだろう。「どうやったら恋愛できるかな〜」と言われたけど、「人間関係は折り合いつけることじゃないですかね〜」と、社会と折り合いのつけられない半引きこもり人間が答えてみた。

 

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◉ どろぼう市のおっちゃんを見て思ったこと

 

 西成では闇市(どろぼう市)がやられている。早朝に街の一角で日用雑貨や電子機器、眠剤、違法DVDまで不許可で売っていて、多くの人で賑わってる。たまに、商店街で一人でポツンと雑貨やロキソニンを売っている人にも出くわす。はぐれ商人と言えそうだ。この前は、夜中の12時に商店街でおっちゃんが時計やらを売っていた。そのおっちゃんを翌日の朝も見たので、「おっちゃん、寝たん?」と聞いてみた。おっちゃんは商品は売れないけど、通行人に「買って」と声をかけて露天販売をしていた。おっちゃんと話しながら、しばらくその場にいた。すると、知り合いらしいおばちゃんが通りがかって、おっちゃんはお金をねだっていた。すると、おばちゃんは1000円をおっちゃんにあげた。別のおばちゃんは、玉出で買った食べ物をおっちゃんに分けていた。商売よりも人からもらって得るお金やモノの方が多いんじゃないか?通りがかったお兄さんがそのおっちゃんに向かって、「あんた、生活保護も年金ももらって、まだ金稼ぎするんかいや」と笑いながら声をかけていた。みんな顔なじみでおっちゃんのいるところが話し場になった。おっちゃんはなじられつつも街の中に包摂されている。違法だけど、路上で小商いをすることはおっちゃんにとっては街の人と交流する居場所なのかもしれない。

 

 生活保護の問題は、孤立しやすいことである。それは、「負債」関係をつくりにくいからだと言える。人から贈与が禁止されていたり、ちょっとした売り買いも収入申告しなければならず、贈与返礼・売買がやりにくい。もちろん、投げ銭をもらうのもやりにくい(アマギフくらいか?)。人と人とはモノやお金をもらったりあげたり、貸し借り、売り買いなどを介して関係が継続される。生活保護制度は、そういった人と人との関係をつくりにくくしている。

 

 そのおっちゃんをまた街で見かけたので声をかけてみると、闇市で稼げずにメシ代が足りないと言われて、「1000円貸して」とお金をねだられた。1000円わたしたら、「保護費の支給日に返すから、また来てや」と言われた。こういうやり取りからも、ツケができることで関係が続くのだと思った。まあ、おっちゃんは次会った時に1000円借りたことは忘れてると思う。笑

 

※ おっちゃんからはおすそ分けでアイスをもらった。

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◉ 公園で絵が売れた

 

 8月の終わりに扇町公園で、居場所をつくっていたら、チューハイを飲んでるおっちゃんと目があって、話しかけたらわたしの絵に興味をもってくれて500円で買ってもらった。女装した姿がソフトな感じで話しかけやすいと言ってもらえた。また、路上で何かよく分からない事をやってるのも面白がってくれた。おそらく、絵がよいというよりも、わたしの漂わせていたカオスなオーラで買う気分になったのだと思う。非日常は強い。みなさんも、絵を買ってくださいね。笑

 

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おわり:「すみっこ」はみんなに必要

 

 世間の中や身内には話せないことを、すみっこにいる人には話しやすいというのがある。多忙でしんどめな人も、わたしみたいにぼんやりした人に平和なものを感じて話してみたいと思うそうだ。みんな、「すみっこ」が必要なのだ。人が一時的に羽を休め居場所になるのが「すみっこ」なんだと言えそうだ。

 

 

エゴマ長者になろう

 

 9月の初めから中旬に野生のエゴマがたくさん採れた。エゴマは同じところに毎年たくさん生えてくる(大葉も同じ)。なので、群生しているところを見つけると、毎年たくさん採れる。このように繁殖力が高い野菜が野山で勝手に生えて、それを調達できると食料確保にはかなりいいのではないか。今年の晩夏は葉野菜が高騰しているので、葉類を野山で調達できることは助かると思う。また、野山で食べれるものを見つけるのは「あそび」として楽しみがある。エゴマは韓国などでは焼き肉に包んでたくさん食べる。エゴマの料理はすぐには思い浮かばないけど、いろいろ料理してみた。香りがいいので冷奴のつけあわせとかもいいと思う。

 

※ エゴマは大葉に似ていて、いい香りがするのですぐわかる(似たもので香りがしないのは食べない方がいい)。エゴマの葉は幾何学的で芸術的だ。

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※ エゴマは野山や河原で群生している。意外と身近にあるかもよ。

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【目次】

 

 

 

1.エゴマ料理のつくレポ

◉ エゴマのチヂミ

 

 チヂミの粉に、エゴマの葉を刻んだのを混ぜてごま油で焼くだけです。香りがいいんだわ。路上でみんなにあげたら好評でした。

 

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◉ エゴマのビビンククス

 

 ビビンククスの作り方は簡単で、韓国人の知り合いに教えてもらった。

 

コチュジャン、醤油、ごま油、ごまを適量まぜてタレをつくる

②そう麺などを茹でて氷水で冷やす

③タレに麺を混ぜる

④野菜などの具をのせる

 

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◉ エゴマのペペロンチーノ

 簡単です。ペペロンチーノに刻んだエゴマをあえるだけです。香りがひきたちます。中々すばらしい。

 

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◉ エゴマのキッシュ

 

 キッシュつくりが上手い人には簡単だと思うが、わたしはイマイチだった。肉食や卵などを控えているため、豆腐と豆乳などで作った。正直、自分が作ったのはあまり美味しくなかったな(フライパンで生地焼いたらめっちゃ固くなった)。こういうアイデアもありますよということで。

 

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※ 参考にしたYoutube動画

 

www.youtube.com

 

 

◉ サムギョプサル(わたしは大豆ミート

 

 焼いたり煮た肉や大豆ミートエゴマの葉で包んで食べるだけです。ごま油、塩、こしょう、コチュジャンなどをつけて食べる。ご飯やキムチを挟んでもおいしい。

 

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◉ ガパオライス

 ガパオソースがあれば簡単です。ソースはヴィーガン対応のものもあります(ツイッターの知り合いがヴィーガン食品として紹介していた)。

 

大豆ミートを湯がく

②ごま油で玉ねぎのみじん切りを炒めて、途中から大豆ミートも入れて炒める

③ガパオライスのもとと、刻んだエゴマを入れて炒める

④ご飯の上に載せたら完成

 

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◉ しょうゆ漬け

 韓国版ごはんがススム君ですね。おろしニンニクなどで作れば手間がかかりません。作れば保存が効きます。ご飯に包んだり、チャーハンにしたりと色んな使いみちがあると思う。

 

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※ チヂミに包んで食べるとおいしい

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※ しょうゆ漬けのレシピは以下を参考

簡単☆ご飯によく合うエゴマの葉の醤油漬け by ★おぺこ★ 【クックパッド】 簡単おいしいみんなのレシピが358万品

 

 

2.野山の食べ物で縁ができる

 

 エゴマをたくさん採ったから、路上でおすそ分けしたり、売れないかなと思って持っていった。いつもの三条大橋にいると、Twitterでわたしのことを知っている人がたまたま通りがかってお話しをしたついでに、エゴマを渡した。また、前に路上で出会った友人を呼んで少しわけた。エゴマでつくったチヂミも少し売れた。「これ山で採ったエゴマなんですよ」と言うと、驚いた反応をされる。野山で採取したものは意外性がありツカミになって興味をもってもらえる。人と話すキッカケつくりにもなる。文末のリンクにある過去ブログでも、野生の食べ物をみんなで採ったり食すのは農漁村では一つのイベントであり、みんなが会って楽しむ非日常の「祭り」になっていると書いた(マイナー・サブシステンス)。

 

※ 来年もエゴマ配達員やります。今年のエゴマは路上で箱買いされました(1500円)!

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※ 路上でおすそ分け。エゴマの認知度は低いし、野生のものはみんな怖がって手にしたがらない。笑

 

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【過去ブログ】採取の意義について書いたのでまた読んでみてください

 

nagne929.hatenablog.com

 

西成一揆②(21年9月16日)

 

 2021年9月16日に、2回目の西成で生存権を求めるしょぼい路上一揆をしました。6月以降3ヶ月ぶりだ。ホワイトボードに書いたのは前回と同じ内容で、①一律給付金を求めよう、②生活保護費UPだった。日程は思い立って急に決めた。

 

 今回は、前日に神戸の山でエゴマを取ったので、エゴマを使ったチヂミを路上で焼いた。これは、めちゃくちゃしょぼい炊き出しの試みでもあった(お金がある人からはお気持ちをもらった。笑)。食べ物があると交流のキッカケがつくりやすい。食べ物をつくる様子を行き交う人にさらしていると、目につくので興味をもってもらいやすい。みんなでご飯を食べながらあれこれ話すのがいいと思った。

 

 

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三角公園の横でしょぼい路上一揆をやった。この日は人が少なく穏やか。

 

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寄ってくれた人にチヂミを焼いてふるまった



❖❖ 前回の西成での路上一揆 ❖❖

 

nagne929.hatenablog.com

 

 

1.路上活動の様子

 

 三角公園の横で、通り行くおっちゃんたちに挨拶をしながらやっていた。だいたいの人は笑顔で「いいやん」と言ってくれたりいい反応があった。目があったイカツイおっちゃんに「僕、社会にうまく馴染めないんです〜」と言ってみたら、「馴染まんでいいわ。あんた、路上でチヂミ焼いとったらええねん」と返された。路上でチヂミを焼く半引きこもりにも居やすい場である。笑

 

 途中、通りがかったおっちゃんと「生活保護費安いな」とか、「給付金は必要やな、選挙で得票目的に自民党は金を出さんやろか」という話をした。前回の記事でも書いたとおり西成あいりん地区は生活保護率が40%と高い。この日は、おっちゃんたちから生活保護費がどんどん下がって生活がキツくなっているという話を聞いた。炊き出しに並んでいたおっちゃんとも話ししたが、このところ引き下げストップ裁判も負け続けているので、保護費は下がり続けるだろうという諦めの機運がある。チヂミをつまみながら話してくれた。ただ、「エゴマって食べても大丈夫なんか」と食べるのをとまどう人もいた。笑

 

 路上一揆では立ち寄ったおっちゃん同士が、近くに住んでいるということで話しあっていた。よもやま話をしたり生活のことについて話ていたようだ。西成は人と人との距離が近いように思えるけど、近くにいる似たような境遇の人を意外と知らないこともある。井戸端会議をしてお互いを知れる場になっていいと思った。

 

 生活の話をしながら、自分たちがつくった釜ヶ崎の歌を歌ってくれたおっちゃんがいた。三角公園の舞台でよく歌っていたそうだ。ビール片手に歌ってくれた。生活費は少ないけどゆるい歌を歌って楽しみを得るのも、おっちゃんにとっての生きていく知恵なのだと思う。タバコ代の引き上げもキツイなと言っていた。最近はコロナで他人の吸ったシケモクも口にくわえにくいなと笑いながら話した。笑

 

❖❖ おっちゃんの歌:いいじゃないの ❖❖

 


www.youtube.com

 

 

 

 途中から引きこもり関連や生きづらさなどでよく話をする友人が来てくれた。また、通りがかったおっちゃんと話したり、「チヂミ食べましょう」と呼びかけたら寄ってくれたお兄さんと路上飲みをしながらワイワイして充実した一日となった。その人には、自分のことを「僕は働く気のない引きこもりです」と紹介したら、「俺も働く気ないで。生活保護やで」と返されて、大変話しやすかった。路上では、働いてないことをすごくラフに言い合えたり、生存権などで話が通じる人にも出会える。このように、路上では、これまでの居場所やコミュニティ、SNSなど、どこでも出会えなかった主流な価値からズレた人とも出会える。路上のほうがいろんなチャンスや偶発的な出会いが起きて楽しい。

 

 また、芸人風のおっちゃんが歌を歌ったり一発ギャグをかまして場を沸かせてくれた。引きこもりがちで人に話しかけるのがしんどかったり、話すキッカケが得にくい人たちには、こういう突拍子もなく話したり絡んでくれるおっちゃんがありがたい存在になると思う。知らないおっちゃんも気軽に立ち寄ってワイワイしやすいのが西成。おっちゃんがウィッグを欲しがったので、プレゼントしたらサインを渡された。笑

 

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路上でチヂミ焼いてたらお客さんが来た。西成は野良猫が多く、猫たちはおっちゃんたちによく世話をされている。

 

 

2.引き続き投げ銭(お気持ち)もお願いします

 

 今回の西成の路上活動で、これまで頂いた投げ銭の総額が7万円を超えた。もらったお金は路上での食事の準備などに使うことが多い(あと、西成でお金がないおっちゃんに寄付したりする。酒代に消えてるかもしれないが・・笑)。食べ物をつくって路上でみんなで食べる試みは続けたいので、今後も投げ銭での応援をお願いしたいです。寒くなってきたら野菜のスープを作ろうと考えている。

 

 あと、9月の終わりから、西日本をブラブラして即席の居場所を作っていく旅をする予定。まずは、福岡の知り合いのところに行って、路上で何かやって交流できそうな人を見つけていこうと思います。その後は、テキトーにブラブラします。訳のわからん旅だが、何かしらみんなが楽しめるようなものになると思うので、またお気持ちを頂ければ嬉しいです。

 

 

◉ ゆうちょ銀行(普通)

 

金融機関コード:9900

店番:448

口座番号:1207633

 

 

◉ PayPay

 

ID:harucafe88

QRコード

 

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使わない化粧品でお絵かき

 

 すごく、いい趣味になりそうな事をみつけた。

 

 いらない化粧品などで、お絵かきをする。もう使わなくて捨てるだけの化粧品とかを絵の色付けにつかってアートにする。まったく技術がなくても簡単にできる。自分の中でちょっとした革命なのだが。しかも、色づきがほのかでいい。アイシャドウの使わない色とかを有効利用するなど。前に、路上で描いたイラストに色付けしたかったけど、色鉛筆やマジックなどもっていなかったからアイシャドウで替わりに色付けしてみたら、いい感じにできてよかったのが発端。

 

 外出して、絵が描きたくなった時に、もっている化粧品で簡単に色付けができる。本来は顔の化粧にために使うものを、絵という別の用途につかうのも何やらズレた試みで自由を感じないかな。動物実験などをしてないCrueltyfreeの化粧品がアニマルライツとしてもいいですね。

 

 

 

【おえかき】

 

◉ ひまわり

 

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◉ ぶどう

 

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◉ ゆるい猫

 

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◉ しかめっつらのシカ

 

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◉ 雨やどり

 

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◉ えびたん

 

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◉ 市電

 

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4コマ劇場(10)

4コマ劇場はついに50作超えたぞ〜

 

 

経験をもとに、ビックリした事や楽しかった事を描いています。非日常的な人との出会いで少し元気になると思うよ。

 

しょぼい漫画家を名乗りたいので、見て楽しければ、Paypayで投げ銭もお願いしますのだ。

 

【目次】

 

 

 

◉ バクチ打ちのおっちゃん

 

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◉ ウィッグ2

 

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◉ ウィッグ3

 

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◉ 哲学者のおっちゃん

 

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◉ 手配師のおっちゃん

 

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4コマ劇場でクスッとしたらpaypayで投げ銭もお願いしますのだ〜

 

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BIが導く個人単位の社会:脱資本主義/ジェンダーフリー/ノマド

 

 

 ベーシックインカムにより個人単位の社会が導かれることを書いていきたい。個人単位の直接給付金は社会の仕組みや価値を組み替える大きなインパクトとなる。BIは単なる生活補助金であるだけでなく、お金が資本主体から個人主体のものとなり(お金のコモン化)、人々の資本からの解放につながる。また、ジェンダー差別に対抗する作用をするため家父長制規範が揺らいでいく。さらに、社会のあり方も定住型からノマド型に変えていく作用がある。

 

 ❖❖ BIは社会のコモンを取り戻すことになるかも(市場経済からの大転換) ❖❖

 

 

 

【目次】

 

 

1.貧困はコモンの私物化で生じる

 

 資本主義は「私的所有の原理」により成り立つ。資本主義は資本によるコモン(社会的共通資本)の私的所有(=商品化)を正当化する。資本主義における格差はコモンの私物化により生じていると言える。

 

 水道民営化が批判されるのは、水というコモン(社会的共通資本:みんなが必要として誰の所有物でもない共有物)が私的に独占されてしまうからだ。

 

  本来みんなの共有物だったコモンを特定の誰かが独占して、それを金儲けの道具にするというのは、強奪と言えるのではないのか。街のおっちゃんが河原で勝手に畑つくったら怒られてしまうが、利権企業が公園や山林といった公的なものを開発や商売のために私物化するのは平然とおこなわれる。ナイキが宮下公園の商業化のために野宿者を追い出した事例など。

 

  みんなの共有物を誰かが独占して営利化すると、独占した人が儲ける一方で、みんながそれにアクセスするにはお金を払わなければいけなくなる。持つ者と持たざる者に二分され、これが格差を生む構造となっている。レント資本主義の正体だと言える。

 

 例えば、日本語を使うことで日本語の発明者にその使用料を払う発想はとらないだろう。言語は、私的所有されるものではないと思われているからだ。そうであるなら、人が生きるのに必要な水や食料などのコモンにも高い金を課すのはおかしいという話にもなる。

  

 資本主義は、生産のあらゆる要素を財として市場化する。みんなの共有物であるコモンすら「商品」として独占の対象とするのを正当化する。K.ポランニーによると、本来は生産のために存在したわけでない、労働、土地、貨幣などのコモンが「商品」となることで市場経済は形成される。資本主義は、コモンの商品化という擬制(フィクション)の上に成り立っていると言える(K.ポランニー、『新訳 大転換』、pp.120〜125)。 

 

 

2.労働の脱商品化:個人と社会を守る「社会権」としての生活保障

 

 資本主義以前には、人は労働によらず自らの生存を維持できた。市場経済が普遍化することで、個人の福利厚生が貨幣関係に依存させられるようになる。労働契約以外に人々が再生産する手段を奪われ、人々が商品化されたという(アンデルセン、2001、『福祉資本主義の三つの世界』、p.23)。

 

 市場経済では労働力も商品とされる。しかし、労働力を徹底的に商品化すると、人の生命維持や労働力の再生産もできなくなり、資本主義が自壊してしまうという自己矛盾に陥る。アンデルセンによると社会主義とは、労働力の商品化への対応として現れたという(pp.49-50)。労働が商品化されると、労働者は賃金と引き換えにみずからの労働力のコントロール権を放棄する。つまり、労働の商品化こそ経営者の権力の源泉で、人の間に差別と格差を生む。これを放置すると社会破壊となる。商品とは互いに競合するものだから、競争が激しくなれば価格は下る。労働が商品化されるほど、労働条件は悪くなる。個人も社会も資本主義の破壊から守られるためには、労働が脱商品化される必要があり、そのために現金給付が「社会権」として正当化されると言える。

 

 アンデルセンは、社会的扶助や社会保険が導入されただけでは、労働の脱商品化はあまり進まず、生存権の保障には不十分であるという(p.23)。

 

 もし給付が少なく社会的なスティグマが伴うならば、救貧制度は、最もひっ迫した層を除いて他の人々すべてを強制的に市場に参加させることになろう。19世紀に多くの国で出現した救貧法が意図したことはまさにこのことであった。同様に、初期の社会保険プログラムのほとんどは、人々の労働市場におけるパフォーマンスを最大化するように周到に設計されていた。

 

アンデルセン、2001、p.23)

 

 

 日本の生活保護制度も利用率が2割と低い。給付額が不十分であり、制度利用で社会的な差別も受けるので、人々は制度の利用をためらう。低賃金でも労働に従事しようとするので、むしろ人々を労働に駆り立てる仕組みになってしてしまっている。現行の生活保護制度は、個人の生存権保障を確実にするための制度ではなく、資本主義をアシストするための制度となってしまっている。最後のセーフティネットとしての生活保護制度の改善を求めつつ、最初のセーフティネットとしてのベーシック・インカムの導入を求めたい。困窮してから金を配るのではなく、防貧の観点からも事前に金を配っておき、人々の生活に余裕をもたせておくのがよい(*1)。

 

 

3.お金のコモン化:お金の分配方式を資本中心から個人中心に

 

 資本主義における格差はコモンの私物化により生じていると述べた。さらに言えば、資本主義における貧困は、お金が交換の手段にとどまらず、お金自体が「商品」としての比重を増していることで生じていると言える。

 

 お金が商品化されることで生じる利益は利子である。利子収益を目的に、金融取引はなされる。現代の貨幣制度は、銀行が利子目的でお金を勝手に発行できるようになっている。むしろ、利子目的でしかお金をつくれないシステムになっている。お金が「商品」として扱われ、人々の手からお金が離れていっている。BIなどの現金直接給付は、お金をみんなの生活を成り立たせるコモンと位置づけ、一人ひとりに個人単位でお金を配分することになる。これは、お金の脱商品化とも言える。

 

 以前のブログでも書いたが、現在の貨幣制度ではお金の発行権が民間銀行にある。民間銀行や企業の利益が優先されてお金の発行や流通がコントロールされるシステムになっている。現代の貨幣制度では、人々の生活のためにお金がつくられるのではなく、民間銀行が中央銀行から得たお金を、企業などに貸し出すことでお金は生まれている。お金自体が利子収益を生む「商品」として流通させられる過程が、銀行の貸し付けに伴う信用創造と呼ばれる。

 

 市中に出回るお金は、民間銀行が貸し付けることにより生じる。企業が貸し付けを受け、企業の経済活動を通して賃金などの形で庶民にお金がやっと届く。しかし、民間銀行が貸し出しを渋ったり、企業が内部留保などでお金を貯め込むと庶民にはお金が回らなくなる。アベノミクスでは、日銀の資金が国債の買い取りで民間銀行に回った(年80兆円規模)。しかし、それらの資金を民間銀行が市中に貸し出さず、準備預金として貯め込んだままだった。お金の流通が銀行の都合でコントロールされる貨幣制度をとる限り、いくら金融緩和をしても、人々の手にお金が届かないことが示された。

 

 お金はみんなの生活を成り立たせる公共的なもの(コモン)だという認識に戻ると、お金の発行を資本の都合に委ねるのではなく、人々の生活のために政府がお金を発行し直接給付する方式は「貨幣の民主化」(コモン化)を後押しする意味があると言える。

 

 

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4.BIによる債務奴隷からの解放

 

 原則、資本主義での私的所有は労働により正当化される。労働によらないお金の発生であるベーシック・インカムは一種の贈与であって、私的所有の原理に反していると言える。MMTに基づく現金給付は、「私的所有の原理」の相対化となる(これは、大澤真幸さんの著書により得た視点)。

 

 MMTにおける租税貨幣論によると、貨幣は政府の「債務証書」である。貨幣が流通するのは、人々が貨幣によって納税を強いられ、貨幣を獲得するための経済活動に従事し、貨幣経済が成り立っているからである。いつのまにか人は国家から負債を押し付けられ、税金によって負債を返さなければいけないと思わされている。その税金で納めるお金を集めるために労働に従事している。つまり、資本主義では人は生まれながらに債務奴隷にさせられていると言える。この、債務奴隷化からの解放がBIにより可能になるのではないか。

 

 

5.BIはジェンダー・フリー(個人単位化)を後押しする

 

 「家族単位から個人単位へ」をテーマとする過去のブログ記事でも何度も書いたが、シスヘテロ規範の家族主義(婚姻主義)がジェンダーにおける富の格差を生んでいる。最低賃金があまりにも低いのを正当化するのは、パート女性などの非正規雇用者は世帯主に養われることが前提となっているからである。最低賃金の低さはジェンダー差別に基づいていると言える。つまり、女性だからということで安い賃金が正当化され、お金の取り分を少なくされている。これは、能力の問題というよりも制度による差別の問題だと言える。ロスジェネ以降に多い低収入の非正規男性もこのジェンダー差別のワリを食っているのである。非正規雇用の拡大は、男性の二分化を生んでいて、リーダーシップのある正規職男性を「一流の男性」とする一方で、能力や地位で劣る非正規男性を「二流の男性」として女性的地位に置いている。非正規差別の本質はジェンダー差別である。誰かに扶養されることを前提にした低い賃金(家族給システム)は、ジェンダーに基づきお金の配分を不平等にしている点で構造的な差別であると言える。

 

 

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 資本主義は男女の賃金格差がないと成り立たないと言えるのではないか。次代再生産のために、「男女のカップル」を家族として、生殖と養育とケアを家族の中の女性に担わせる。これを可能にするには、女性を低賃金にして男性の下に養われる構造を作り出すしかない。この家族規範を支えるのが、最低賃金の低さや社会保障が世帯単位であるという家族主義(ジェンダー差別)なのだと言える。家庭内で夫婦の不仲が続いたり、DVにあっていても、女性が逃げ出せないのは低賃金のため経済的自立ができなかったり生活保障がないためである。BIがあれば、不本意な夫の下から家を飛び出して経済的自立もしやすくなる。婚姻関係にとらわれない自律した生活を女性が選択できる。BIが家族規範を弱め、ジェンダー差別の不利益を低減する大きな効果がある。BIは個人単位の社会を後ろから支える。家父長制の支持者には面白くない制度である。さらに、家族の中にいるがお金がない主婦や引きこもりなど、家族主義の制度では救済できない層にお金が届くようになる。個人単位のBIは家族主義の壁を超えるのだ。

 

 

6.BIと賃金保障(個人単位化)はセットでおこなう

 

 イギリスにはBIに相当する制度があった。1795年〜1834年に施行されていたスピーナムランド法である。労働者のプロレタリア化から守る目的で導入されたが、社会が衰退してしまい、BIの失敗例として言及されることがある。

 

 スピーナムランド法は、人々に生活保障をすることで、労働市場の形成を阻み、市場経済から社会を保護したものとしてK.ポランニーの『大転換』で紹介されている。スピーナムランド制度は、仕事をしていない人だけでなく、仕事をしていても賃金が一定水準に満たない人も補助した。しかし、これを口実に雇い主は賃下げをして、労働生産性も下がっていった。働いても稼げないのだから、労働者の労働に対するモチベーションも下がっていった(労働倫理の衰退)。スピーナムランド法では、生活保障がなされるが、その分、賃金の引き下げがなされて、労働者が労働によって経済的自立しにくくなってしまった。最低賃金や労働条件の規制がないままBIを導入すると、雇い主が賃下げをしてしまい、労働者が労働で自活できなくなり、貧民の位置に人々が押いやられた歴史の例だといえる。

 

 このスピーナムランド法の事例を引用して、BIを導入するとみんな働かなくなり、酒浸りの人が増えたりして社会が退廃すると指摘される。しかし、この失敗は、生活保障が生み出した問題ではなく、低賃金構造が生み出した問題である。社会にディーセントな条件の仕事がなければ働く気は起きないだろう。ならば、労働条件をよくして働いてもちゃんとした対価が発生する雇用体系にしなければいけない。時給1500円以上で、個人が働いて一人で経済的自立できる水準の最低賃金にならないといけない。これは、つまり個人単位の雇用体系にしなければいけないということだ。これまでもブログで指摘したが、今の日本の最低賃金は被扶養を前提としていて、これはジェンダー差別に基づく家族単位のシステムに基づく。BIの導入と個人単位のシステム構築は平行して進める必要がある。

 

 

7.BIで人は働かなくなるのか?

 

 人は存在証明を求めるもので、労働はその手段として大きなものだ。BIがあっても生活するには不十分な額であろうから多くの人は労働をする。社会への寄与度が労働や所得で図られる社会が続く限り、人は承認を求めて進んで労働をしようとする。BIが導入されても仕事をしない人は社会で居心地が悪いだろう。BIがあれば、人々がよりよい仕事に就こうとする意欲をもち行動に移すのは過去の実験結果からも指摘されているようだ。BIは、酒やタバコ、ギャンブルなど即席的快楽のために使われるのではなくて(1%未満)、人々に経済的・精神的な安定をもたらし、よい条件の雇用を探すための支えとして使われたという。自己実現欲求の支えとしてBIが機能する可能性が大きいと言える。

 

アメリカでのBI実験に関する記事】

https://ledge.ai/california-stockton-re-posting/

 

 

8.BIはノマド型社会を後押しする

 

 何かしら人は社会の中で人との関わり合いを求め居場所をつくりたいと思う。そのために活動をする。しかし、一定の収入が保障されれば、その活動が賃労働一辺倒ではなくなるかもしれない。BIにより労働への従属が弱まれば、労働以外での社会的承認も得やすくなり、いろいろな活動をする人がでてくる。より多くの賃金を生み出すことだけが豊かさであり社会的な価値なのだろうか。芸術家は稼げない人が大半で、フリーターの掛け持ちをしている人も少なくない。だからといって、彼らの芸術活動がなければ社会には何とも言えない「空白」が生まれるのではないか。稼げなくても創作活動を続けることができると、人生の冒険をして、ワクワクするような生き方もできるようになる。それが、イキイキした社会をつくり、社会の健全化や多様化にもなるのではないか。流動的になりノマド的で抑圧の少ない社会にもなる。浮足立って微熱を帯びた社会になる。むしろ、今は社会が冷え切っているから安易にアルコールやなどのハードドラッグに頼り、ハイになろうとしてしまうのではないか。BIは単なる生活補助金という意味を超えて、社会の価値体系や人の生き方を定住型からノマド型に変えるものにもなる。社会のあり方を根本から変えてしまうものになりうる。

 

 

【注】

(*1)

ベーシック・インカムは、竹中平蔵や維新の会などの発言のために、社会保障費の削減を正当化するための道具にされるのではないかと悪いイメージが広まってしまった。社会保障の削減のためのBIは論外だが、かといって、今の社会保障制度のすべてをそのまま維持するのではなく、BIの導入に伴い、不必要となる制度は廃止・縮小していくのが現実的だと考える。もちろん、生活保護制度は個人単位化や保護費引き上げなどをして、最後のセーフティネットとして機能させないといけない。

 

 

【引用・参考文献】

《文献》

◉ 伊田広行(1998)『シングル単位の社会論』、世界思想社

◉ 井上智洋(2021)「第五章 銀行中心の貨幣制度から国民中心の貨幣制度へ」、高橋真矢編、『資本主義から脱却せよ 貨幣を人びとの手に取り戻す』光文社新書

◉ 大澤真幸(2021)『新世紀のコミュニズムへ 資本主義の内からの脱出』、NHK出版新書

◉ G.エスピン=アンデルセン(1990=2001)『福祉資本主義の三つの世界』ミネルヴァ書房

◉ K.ポランニー(1944=2009)『新訳 大転換』、東洋経済新報社

 

《ネット記事》

“月5万4000円のベーシックインカム実験「働かない人が増える」「タバコや酒に使われる」は誤り、アメリカで意外な結果が明らかに”

https://ledge.ai/california-stockton-re-posting/

 

 

【関連記事】

 

◉ 「定住型からノマド型」(個人単位化)に関する記事

nagne929.hatenablog.com

 

 

 

4コマ劇場(9) アイドル編

引きこもりが勝手にアイドル名乗って3ヶ月がたったよ。

 

【題目】

 

 

◉ 祝・アイドルデビュー

 

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◉ 知らない人への話し方

 

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◉ アイドル活動①

 

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◉ アイドル活動②

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◉ アイドル活動③

 

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