生きるための自由研究

脱・引きこもりできそうにない半引きこもりです。

熊野古道を歩く(その1)

 10/1〜10/6にかけて熊野古道の中辺路を約120km歩いた。紀伊田辺駅から歩きはじめ、熊野本宮大社熊野那智大社→熊野速玉大社の熊野三山を歩き終えた。すべて東屋や河原などで野宿した。今回は、毎日かなりの距離を歩いた。このようなペースでは行くのは強行軍なので良くないです。でも、歩き出したら、ついつい歩き続けてしまう。自分の積極的な意志で歩いているのでもなく、誰かから歩くことを急かされているわけでもないのだが、取りさらわれるように歩みをやめられない。そういう中動態的な感覚に突き動かされていた。もちろん、ただ歩くだけでなく、景色や鳥を見たり、川で泳いだり、野草やキノコをとって料理したりと楽しみました。旅という非日常では人から意外な話を聞けたりして、それも楽しい。食料は事前に買っておいた方がいいが、水は湧き水や川の水でなんとかなる。おいしいし。



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《中辺路ルート図》

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今回歩いた中辺路はピンク色の線

 

※以下のサイトから借用したマップです

熊野古道|新宮市観光協会

 

 

【10/1】25km

紀伊田辺駅→滝尻王子(中辺路山道の起点)

【10/2】21km

 滝尻王子→熊瀬川王子(山の東屋で野宿)

【10/3】16km

熊瀬川王子→熊野川の河原(途中3kmほどヒッチハイク

【10/4】20km

熊野川の河原→熊野本宮大社川湯温泉→小雲取越→小口集落

【10/5】18km

小口集落→大雲取越→熊野那智大社→大門坂

【10/6】20km

大門坂→那智駅新宮駅→熊野速玉大社

 

 

 

◉ 1日目(10/1)

 

 山中での野宿となるので、防寒具とシュラフなどで荷物が多くなる。17年のお遍路で使用した大きめのザックで行く。前日の9/30は西成のホテルで1円で宿泊した(SNSのフォロワー1000人以上なら宿泊費1円になるキャンペーンをやっている)。今回の旅での宿泊費は、この1円だけです。

 

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・電車の中で出会ったスーパーおばあちゃん

 

 天王寺を6:45発の電車で湯浅駅で乗り継ぎ、紀伊田辺駅に9:51に到着した。湯浅駅で乗り継ぎ電車を待っている時に、ホームにいたおばあちゃんから話しかけられ、電車の中でもずっと談話していた。戦時中に北海道の親戚のもとに疎開した話や、戦後満州からの引揚者の人たちによくしてもらったとかの話を聞いた。86歳のおばあちゃんだけで、当時の女子では珍しく私立大学を出たという。和泉の医療機関で働き、通所する西成の困窮者の人たちの生活支援もやっていたそうだ。専門知識を勉強するためカルフォルニアの大学にも留学したという。西成の人は複雑な境遇な人が多く、援助職は大変だったという。でも、西成の人たちの人情に助けられたという。わたしが前にあいりんセンター前のおっちゃんに寝床を案内してもらった話をしたら、すごくビックリしていた。このおばあちゃんは、お遍路も歩いたり、熊野古道も歩いたりしたスーパーおばあちゃんである。旅の話もたくさんした。こういう話ができたのも、わたしが旅人モードで非日常性をかもしだしていたから、ちょっと突っ込んだ身の上話を聞くこともできるのだろう。旅をしているとこのような非日常モードの会話が可能となり思いがけない出会いもある。

 

 

熊野古道の始点である滝尻王子へ

 田辺駅からはのどかな田舎の道を歩く。途中、車道から外れ山の中を歩いたり、梅林やみかん畑の横を通るなど変化に富んでいる。山を抜けると稲葉根王子を経て富田川を登っていく。川で泳いで汗を流したりした。この日は滝尻王子まで25km歩いて、河原で野宿した。10月の山中は昼は暑いが夜は冷えるので長袖とシュラフが必要だ。

 

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各所に王子跡がある。熊野九十九王子は、京都から熊野三山に至るまでに設けられた。熊野権現御子神を祀る分社であり、巡礼や旅の安全を祈願する場であったという。

 

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南部や田辺などは梅の産地で、街や山は梅の木だらけである。

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車道から山の中に入って歩いたりもする。登りは少ない。

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山を抜けると富田川の横を歩いていく。写真は稲葉根王子の近く。この川は現世の不浄を清めるとされ旅人から崇められたという。

 

 

◉ 二日目(10/2)

 滝尻王子から山道に入って、山の中を歩き続けた。この日はかなり歩いた。坂道や登りが多く身体にこたえた。途中、イグチという可食キノコをみつけて夜ご飯にした。

 

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いつものように野宿した。河原は寒い。

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滝尻王子から2時間歩くと高原霧の里に到着。景色が開けて気持ちいい。

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水車は心が和みます。

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山道の横には石で積んだケルンがたくさんある。みんな石で即興アートをつくって歩くんだろう。

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切り株に石を置いて顔になってる。切り株アート。

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熊野古道は人がほとんどいない。ずっと一人で山の中を進む。歩きをやめたら静寂に包まれる。でも、ヤブ蚊が多いのでおちおち休憩ができない。

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山道で食べれるキノコを見つけた。イグチ(ヤマドリダケ)という名前でイタリアではポルチーニ茸と呼ばれる高級食材です。

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夕食は、山道でとったキノコ(イグチ)と野草のオオバコでパスタをつくって食べた。

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2日目は山の中の東屋で寝た。大きくてしっかりしているので寝やすかった。熊野古道には東屋が各所にあるので歩き疲れたら寝ることはできます。

 

◉ 3日目(10/3)

・朝の林道をバイクでブラブラしてたおっちゃんと話す 

 朝、林道の横にある公衆トイレで歯磨きに行くと、小さいバイクから降りてタバコを吸っているおっちゃんがいた。挨拶から始まり、話をしているとおばあちゃんが南方熊楠の友だちで、熊楠の話をよく聞かされたらしい。夜に熊楠の家に行くと、庭で裸になってぼんやり月を見ていたそうだ。熊楠は「変わった人」として田辺の人気者だったようだ。和歌山の山間部集落では木こりや炭焼きなどの生業で暮らしている人が多いのだそう。若い人が山村ぐらしに憧れて炭焼き職人のもとに弟子入りするも、ずっと炭の様子を見ていなければならず、まともに休める時がないという。それで、月収は10万円くらい。悪条件の労働だそうだ。おっちゃんは、あてもなくバイクでブラブラするのが好きで、冬の寒い時でも何も考えずにただ走っているのが心地よいそうだ。運動しているわけでもなく、休んでいるわけでもないアイドリングの状態が心地よいのだと語った。禅なども、動いているわけでもなく寝てるのでもない状態に心地よさがあるのではないかと。わたしは、この話を聞いて中動態的な感覚だなと思った。わたしが頭を空っぽにしてブラブラ歩いているのも、アイドリングという中動態の状態なんだなと。

 

本宮大社手前の河原まで行き野宿

 この日も、ひたすら山道や林道を歩く。湧き水や川の水があるので飲水には困らない。冷たくておいしい。自販機も少ないからこういう自然の水を飲んだり汲んだりして歩を進めたい。最後、3キロくらい手前になって軽トラのおっちゃんに道を聞いたら車に乗せて連れて行ってもらった。旅をしてると、こういう厚意にあずかりやすくなる。ありがたい。

 

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仲人茶屋跡から迂回路に入るが、この道が坂がきつくてバテた。

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昼に峠(三越峠)についた。ソーメンを茹でて食べます。

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ソーメンは茹で上がる時間速いから便利。大豆ミートと野草(ツユクサヨメナ)を入れて昆布だしと醤油で味付け。

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大豆ミートはアウトドアに便利です。軽いし腐らない。水でふやかせば食べられる。いろんな料理にあう。携行食として推したい。

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町の中に出たら名物のめはり寿司も食べた。

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河原で野宿。月や星がきれいだった。

 

 

後半は以下でレポートした

 

nagne929.hatenablog.com