生きるための自由研究

脱・引きこもりできそうにない半引きこもりです。

炎上商法としての陰謀論

 

 街の中心で、「コロナは嘘」と大声で集会している陰謀論者をよく見かける。しかも、日に日に勢いを増している。街の中心ではビッグイシューのおっちゃんも販売活動していて、陰謀論者が勢力を広げると、おっちゃんの営業活動が妨害される。また、街から居場所も奪うことになる。

 

 

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【目次】

 


1.裏口からワンチャン狙うのが陰謀論

 

 陰謀論にハマる過程をツイッターでわかりやすく説明したのは高知東生さんだ。「俺だけがこの動画にたどり着き、世の真実を知ってるんだと。そうか、やっぱり!と。どんどんハマっていきました」。つまり、自分だけが知っているという優越感を簡単に得られるから陰謀論にハマりやすいという。自助グループの仲間に陰謀論をマジメに話すと笑って間違いを指摘されたことで、自分を修正できたという。仲間から笑われたが、それを素直に受け止め、後にネタに昇華できたことが陰謀論脱出によかったという(これは、依存症からの回復にも通じるだろう)。

 

 

www.huffingtonpost.jp

 

 

 陰謀論者はデタラメな事を「みんなが知らない真実」とでっち上げて、それを知っているワレワレという超越的立場を得ることを目的としている。裏ワザでワンチャン狙っているのだ。いびつな形での権力欲の発現だといえる。「コロナは嘘」だと路上で騒ぐことで、衆目を集めてインチキな仲間との連帯感をもつ。彼らにとってはたまり場であり非日常を味わえる居場所にもなっているのだろう。カルトや陰謀論の人たちも主流秩序に乗れなかった人たちなのだろうとは思う。でも、ただの非主流のダサい生きざまはつまらないから、デタラメをカマして注目をあびたり権力を取ろうとしている。これは炎上商法といえる。 

 

 オウム真理教はその中がピラミッド型の階級秩序となっていた。ナントカ大臣など現政府と相似した役職をつくって疑似的に権力を体現していた。しかし、自前の組織での権力ゴッコにとどまらず、メディアや選挙に出るなど主流社会でも権力を志向していく。そのこじらせた権力欲が数々の殺人事件ともなった。カルトや陰謀論に自分が一体となってアクションをすると万能感を得た気分になる。この気分から降りることができず、そこが居場所となってしまう。これはやがて、活動の目的そのものではなく、組織や居場所を維持するだけの活動になってしまう。

 

2.「満たされなさ」がカルトや陰謀論を勢いづかせる

 

 カルトや陰謀論の原動力は「満たされなさ」だろう。主流秩序からの疎外感を、みんながしないことをして特別な存在として自己をアイデンティファイしようとして誤魔化しているのではないだろうか。疎外された人がブレずに立ち止まっていられることは難しい。やり場のないやるせなさの向け先がわからない。見えない自由が欲しくて見えない銃を撃ちまくりたいのだ。社会で通用する高い実力をもっていたり、何らかの自信をもっていないかぎり、それを穴埋めする形でヘンテコなスピ系、カルト、陰謀論などに飛びついてしまう心理は他人事として片付けられない。人はもろいからだ。居場所というのは自分の力をうまく体現できる場や人間関係なんだろう。自己表現ができる居場所が得にくいと、大きな敵と戦うストーリーで連帯して一体感を得ようとしたり、マジメに反社会的活動をやって安易なガス抜きに走りやすくもなる(ネトウヨ、過激派、カルト、陰謀論)。

 

 いわゆるパリピなどの陽キャは、派手に遊んでつながりも作りやすい。うまいこと気晴らしをしながら生きられる。対して、陰キャはそういった派手なことに憧れつつも、それができないでいて「満たされなさ」を感じやすい。陽キャのようにワーッと騒げないが、内面には騒ぎたい欲求がある人も多いのだ。その欲望を発露できる場としてカルトにスライドしやすい。だから、意外にも、地味な人が一発逆転的な感じでカルトなどに行きやすい。例えば、大学ではよく宗教勧誘がなされているが、まだ大学で知り合いができていない新入生がターゲットとなる。また、ハミゴになりやすい性格がおとなしめの学生が勧誘されやすいという。疎外感による寂しさが付け込まれやすいのだいう(島田裕巳『わたしの宗教入門』ちくま文庫)。

 

 疎外感は自分が他者に影響を及ぼせていない不全感に由来する。自分が権力の主体になれず風を切ってる感じから生まれる。社会や他者に自分なりの関わりができないことが生きづらさとなる。自分のしっくりくる形で社会に存在できている実感が大切で、そうでない形でごまかしながら社会と関わってるとインチキな承認となり自己がぐらつく。わたしは以前ブログで、抑圧的になりすぎない形でしょぼい権力をさりげなく行使できることが大切だと書いた。

 

nagne929.hatenablog.com

 

 

3.裏ワザに走らず、あくまで正攻法にとどまる

 

 「生きづらさ」とは、生産性主義/能力主義/家族主義といった主流秩序による問題である。陰謀論に走るのは、正面から主流秩序はおかしいと問うことが抑圧されていて、さらに正論がダサいと思われている風潮も理由にあるのではないか。これは、陰謀論だけでなく、教祖系、奢られ系、レンタル系などの人たちがインフルエンサーとして崇められ、秩序のあり方は問われずテクニックばかり強調されることにも重なるのではないか。浮足立って安易な裏ワザに走ろうとせず、腰を据えて主流秩序を問うたり、ズレるような実践をしていきたい。それで仲間や話のわかる人とつながり、対話をしていく正攻法が自己をエンパワーして社会の変革にもむすびつく。