生きるための自由研究

脱・引きこもりできそうにない半引きこもりです。

トーン・ポリシングについて

 

【目次】

 

 

1.トーン・ポリシングとはマイノリティ封じ込めの手段

 

社会問題や権利要求について発言をすると、発言した内容自体への反論ではなく、相手の態度や立場をつつくことで、相手の主張をおさえこみ無効化させようとする人がいる。こういうやり方はトーン・ポリシングと呼ばれる。

 

女性や障害者、セクシャル・マイノリティ、在日外国人、生活困窮者といったマイノリティ属性にある人が権利の主張、差別の告発などをおこなう時に、「そんな言い方じゃ誰にも聞いてもらえないよ」などと言って、その人たちの態度をつつくことで主張を封じ込めようとする。「マジョリティの人たちの機嫌を損ねるようなやり方をするな」と言うような感じで、マイノリティは礼儀正しく謙虚であればその主張を聞いてあげようという上から見たような言い方をする(でも、結局は言い分を聞いてくれそうにないと思う)。しかし、マイノリティにかかる不利益やこうむっている差別について今まで声が出てきたのに、その声が聞かれなかったり封じ込められたりしてきた。だから、多少口調が荒くなったり怒っているのである。そこでは、丁寧に言ったり温和に受け答えしても、無視したりつけ上がることをマジョリティがしてきたという経緯もあるだろう。マジョリティはマイノリティの主張に対して聞く耳をもたない態度をとりやすい立場にある。そうであるがゆえに、いくらマイノリティの側が説明をしたところで理解しようともしない場合がある。マイノリティは自分たちが踏まれてきて名誉を傷つけられてきた事に対して、どういう点が問題であり、どういう点で差別になるかを言語化して説明するためのコストをかけさせられてきた。言語化には知識と能力が必要とされる。立場の弱いマイノリティが追い打ちをかけられるように言語化や忍従のコストがかかっている現実がある。

 

2.トーン・ポリシングの類型

トーン・ポリシングの目的は、ひとえに相手の主張を封じ込めることにある。そのため、この目的にために、相手の態度・立場・弱み・ミスなどあらゆる点を足払いのチャンスとする。トーン・ポリシングは日常の人間関係に溢れている。以下は、代表的なトーン・ポリシングのやり方である。

 

①相手の態度に対する攻撃

②相手の立場に対する攻撃

③違う話題をぶつけることで相手を封じ込める

 

 ※③は【ワット・アバウティズム】と呼ばれるそう。私は【わんこそば論法】と読んでいる。

 

①相手の態度に対する攻撃

 

「そんな言い方じゃ聞いてもらええない」

「態度がなってない」

「不真面目だったら何を言ってもダメだ」

 

などなど

 

 

②相手の立場に対する攻撃

 

「子供のくせに生意気だ」

「学生なのに一丁前のことを言うな」

「新入社員のくせに偉そうだ」

「引きこもりで親のスネをかじっているのに生意気だ」

 

などなど

 

 

③違う話題をぶつけることで相手を封じ込める

 

こちらが、Aの主張をすることに対して、「Bについては言わないのか?」などと言って、こちらの主張を無効化させようという魂胆がある。その人は、Bについて積極的に何かをしたいわけではなく、ただこちらの主張を無効化する目的でBを利用している場合が多い。今はAについて話しているのにBについて持ち出す必要はあるのか??。Bについて関心があるなら自分が率先してやればよいのに、Aを話題にしている人になぜわざわざ迫ってくるのか??。難癖を付けて口を塞ぎたいだけだからだろう。

 

【例】慰安婦問題

日本の植民地支配における従軍慰安婦問題(A)を話題にしている際に、韓国軍もベトナムで強姦をしていたという話(B)をしてくる人がよくいる。これは、韓国のおこなった非道を持ち出して、日本の戦時性暴力の責任を曖昧にしようという意図がある。日本も韓国もどっちもどっち、戦時における性暴力は仕方ない、という方向にもっていくために言われる。こういう人たちは別に戦時性暴力を告発することが目的ではなく、ただ日本の加害責任をないことにしたいだけである。

 

 

3.私の受けたトーン・ポリシング

まず、私は実家ぐらしの引きこもり(少し働いてる)であり親の世話になっている。この立場について、「ぬるま湯にいるから何言っても説得力ない」と言われたり、「自立できないくせに大きな事ぬかすな」とか言われたりする。これは②の【立場に対する攻撃】である。こちらの言ってる事を無化するために立場をつつくのである。

 

また、2020年1月31日に路上で「最低賃金を1500円に上げよう」というアピールをおこなった。その際に、通りがかりのおっさんが突っかかってきて、「お前、そんなことよりもビニール袋削減のことやれよ」と何度も言ってきた。その、おっさんに対して「そんなに声高に言うなら、ご自身でやったらどうですか?」と言ったのだけど、ちゃんと応えない。ええかげんうるさいので、「もうええわ、あっちいけよ!」と追い払った。そしたらおっさんは、「お前、そんな態度やったら結果出えへんぞ」と言い放って去っていった。ここでは、③の【違う話題をぶつけることで相手を封じ込める】ことと、①の【態度に対する攻撃】の両方をやられたわけである。こういうのは、ネットでもよく見る典型的なトンポリだったので打ち返せた。素直に立ち去ってくれたのがよかったが(笑)。トンポリ野郎は迷惑ですね〜〜

 

4.トーン・ポリシングはなぜおこなわれるか?

「権利の主張」を「目上の人へのお願い」と勘違いしているからである。権利の主張はマイノリティのマジョリティに対するお伺いという見方が支配しているから、権利の主張者に対して低姿勢や誠実さを求めてくるのである。だから、マイノリティが「権利を保障しろ」と声をあげた時に、マジョリティは「それが人にお願いする態度か?」と言わんばかりの高圧的な姿勢をとるのである。「権利の主張」は「お願い」ではない。権利の主張とは「本来あるべきものが奪われているから、それを保障しろ」と言っているだけなのである。マジョリティは当然のように享受している権利をマイノリティが主張すると、あたかもマイノリティがマジョリティを脅かすことであるような図式で語られがちだ。しかし、マイノリティが求めているものはマジョリティとの対等な関係である。マジョリティ中心の社会システムにおいて割を食わされ権利を奪われてきたマイノリティがその立場上のマイナス(−)をマジョリティと同じ地平(±0)にしろと言っているだけである。特権=プラス(+)を求めているわけではないのである。

 

 

というわけで、トンポリ野郎に何か言われたら、「その話は、今関係ないですよね」とか、「それは、立場とか関係ありますか?」と言ってバイバイしましょう〜〜